測りすぎを読んで

測定結果と報酬/評価を結びつけることの弊害

書いてあったこと

本には様々な弊害が書いてあるが一つ大きな問題としては、測定した結果を直接個人や組織の評価と報酬に結びつけることだ そうすると、個人や組織は測定結果を上げることにのみ集中してしまい本来やるべきことをやらなくなる 例えば、病院において「術後30日の生存率」を測定しそれを元に評価してしまうと、病院は直すのが難しい患者を避けるようになったり30日は無理やり生存させるようにしたりする

感想

“What measured gets managed”という言葉を聞いたことがあって、いわゆる人事評価に定量的な指標のみを使うとそれだけを上げようとしてしまうということの弊害は認識していたけど、たくさんの事例とともに紹介されてて、例えば、googlepagerank食べログの評価などは本来は良いwebpage/良い店を見つけるための指標だし、単一の指標ではないはずだけど、どうしてもそれだけを目的にランキング操作されてしまう。例えば、人間をAIが置き換えるという話をした時に、いわゆる強化学習といったなんらかの価値関数を最大化する機械学習を使った時に、価値関数のみ(e.g. 売上)を最大化させちゃったら持続可能でなかったりなんらかの弊害を生みそうだなと思った

測定とマネジメント

書いてあったこと

組織がより大きく多様になっていく中で、経営トップと実際の活動を取り組む人との間の隔たりがますます大きくなって、組織が複雑な構成要素で作り上げられるようになると、全てを理解することが不可能になる。トップにいる人々は時間や能力が限られた中で判断を下したり、過剰な情報を処理したりしなければならない。その際に、測定基準は魅力的な手段に見える。 経営するために雇われただけの、組織について無知な経営陣が現場に実績測定を要求することがある。無知は現場知識がない中で組織にぽんと入ってきたことが原因である場合が多い。経験と現場知識は重要なので、経営陣は内部から選ぶべきだ。

感想

人間の認知や認識にもバイアスがあるため、トップが完全に感覚で意思決定している場合は、例えば意思決定に一貫性がなかったりして、働く人は困りそう。例えば、アマゾンのジェフベソスが「意見で決めるなら、私の意見が常に勝つ。しかし、データは意見に勝つ。だからデータを持ってこい」というようなことを言った話聞いたように。データは組織の中の権力構造の外側にいるので説得する上でも有用な手段になりそうだが、トップが自分の無知や経験のなさを隠すための手段として、数字だけを見て経営するようになると上手くいかなくなるんだろうなと思う。

効果のある測定

書いてあったこと

作業を行う当人たちが実績を内部で監査する目的で使うデータと、第三者が報酬や懲罰のために使うデータとを区別することが重要。テストなどの測定ツールは貴重だが、現場での制約などを理解することができない第三者による外部評価よりは、現場の人間が内部で分析を行う際にもっとも役立つ。測定実績のシステムが機能するのは測定される対象の人々が測定の価値を信じている場合のみ。

感想

例えば、ソフトウェア開発においても、ベロシティ(開発速度)を自分たちの中でどのように変化していったかというのを理解するのに使うのは意味があるが、複数のチーム間で比較したり、それに基づいて報酬を与えたりするようにするとその数字に対して嘘をつくようになるのは実感としてもわかる。チームや組織において、現状を把握しようとして、測定したりするはずなのに、それを元に評価しようとすると、結果数値が偽物の数値になって現状がわからなくなるという状況に陥ってしまうことはありそう。

透明性の弊害

書いてあったこと

我々が自我を持てるのは、我々の考えや欲望が他人に対して透明ではないからだ。誰かと親密になれるかどうかはその人間に対して、他の誰かよりも自分をもっと透明に魅せられるかどうかによって決まる。政治においても、政治家のやりとりが完全に透明になっていたら、率直な対話と独創的な駆け引きをすることができなくなる。政治において、アウトプット(=社会的・経済的傾向について政府が作成するデータや法規制などの政府の行動の結果)は可能な限り一般に公開すべきだが、インプット(=政策決定者や公僕たちの議論)は公開すべきではない。ブラッドリー・マニングが軍や国務省の機密情報を公開したが、これによって、アメリカの外交官が招待的に機密情報を集めにくくなっている。会話の機密性が信頼できないとなれば、話すことができなくなる。

感想

自我が保てるのは、秘密の部分があるからというのは考えたことなかったけど面白い考え方だなと思う。情報をすべての人に公開するというのはやはり弊害も大きいし、信頼関係がないと公開したくない情報というのは絶対にあると思う。なので、1on1だったり少ない人数でより率直な意見を共有できる場所を作るのかなと思う。また、slackなどのチャットツールで1to1のチャットDM(Direct Message)を禁止すると結局他の手段でやりとりが発生してしまうというもあったけど、やはり必要悪的なところはあると思う。